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サキペがサケに?-サケの語源(5) [ 北海道と食]

アイヌ語源説-サケの語源(4)

サケの語源はアイヌ語だ、というのはもっともらしい説明なのですが。しかしどういうわけか、語源だとされるアイヌ語の「サキペ」は、サケの意味ではなくて、マスのことなんです。どうしてそんな取り違えが起きたのか?
金田一京助は、和人が取り違えたという説明とアイヌが混用しているという説明をしています。はて、さて、それは本当なんでしょうか?

 

■夏の鮭は「サキペ」か?

アイヌがサケをマスの意味の「サキペ」と呼んだという説明から先に検討してみましょう。
金田一氏がそう云いうる根拠は何なのでしょうか。自ら確認したことなんでしょうか。

ところで広辞苑の編者である新村のアイヌ語語源説(「新村出のアイヌ語源説-サケの語源(2)」)を引用した中に「バチェラー氏の辞典には、サクイベと綴り、春又は夏の鮭と解いてある。」とありました。バチェラー辞書は有名なアイヌ語辞書です。そこに「サクイベ」(これは「サキペ」の誤り)を「春又は夏の鮭」としているというのです。金田一はこれを根拠に、鱒といっしょに網にかかる夏の鮭も鱒とともにアイヌは「サキペ」と呼んだ、としているのではないでしょうか。

そこで、バチェラー辞書を見てみましょう。

■バチェラー辞書
オキナワなんでも事典
バチェラー辞書(ジョン・バチラー『アイヌ・英・和辭典』岩波書店、1889年初版、1938年第4版)はアイヌ語→和英と英→アイヌ語との2つで出来ています。
まずアイヌ→和英の「Sak-ibe」を見ると。「サクイベ、春又は夏の鮭、Spring or summer salmon」とあります。これが問題の部分です。
まずサクイベは間違いで「サキペ」です。意味は、確かに鮭だと書いています。しかしこれは間違いで、サキペはマスなのです。

次に、英語→アイヌ語を見てみましょう。
「Salmon」には「shibe、ichaniu chep、ichanui chep、hemoi、keneu、kamui chep、sakibe、chukche、chuk chep、akiaji」があります。鱒のことを指すsakibe(sakipe)は、しっかり「Salmon」の中に入っています。
では鱒を意味する「Trout」を見ると。「kitra、kitcheppo、chirai chep、tokushish、yaichep、ichanui chep」となっていて、sakibe(sakipe)はありません。

というわけで、バチェラーは、sakibe(sakipe)「サキペ」は、マスではなく完全にサケだとしているのです。

バチェラー辞書は、どうしたことか、サキペをマスではなくサケだとする、大きな誤りがあります。これを根拠に夏のサケもサキペだという金田一の説明は誤りでしょう。

■和人がサケとマスを混用

次に、江戸の人々はマスとサケとを区別せず、ともにシャケと呼んでいたという説明はどうでしょうか。

マスとサケについては、「サケとマスの違い」で書きました。そこに書いたように、日本ではシロサケにサケ、サクラマスにマスの名を冠していて。シロサケ以外はマスという名をつけます。どちらも海へ下る魚なので、体が大きい。サケもマスもともにサケ科の魚で、いまでは両者を区別せずにサケマスと呼んでいます。
江戸時代は、北海道のサケやマスは塩漬けにして売られていました。そしてサケもマスも区別せず、ともに「シャケ」と読んでいたのでしょう。実は、このことは今でも同じです。

■外国での混用

ところで、金田一は、外国でもサケとマスが混用されている、としています。この点についても「サケとマスの違い」で説明しました。

元来、マスとサケとは同一の種です。それが文化によって名称が違ってつけられています。日本のことは先に書きましたが、英語では別の区別があって、salmon は降海性、trout は河川生活性という区別があります。そのためサクラマスは降海性なので英語ではCherry salmonと云われます。また和名ではサケはシロザケのことだけを指すので、キングサーモン(king salmon)は和名ではマスノスケとなります。
 まあ、どっちが混用かわかりません。サケ一般とマス一般とは、そもそもは区別できないんですから。

というわけで、和人によるサケとマスとの混同という説明はなりたちそうです。しかし、本当にそうなのか。実は、これまた疑問符だと思います。


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