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サケの語源(1) [ 北海道と食]

「サケ」の語源を調べたら、よくわからないということことがわかりました。
アイヌ語が語源だという説が有力ですが、しかしネットにある多くの情報は(いつものことだけど)とんでもなく混乱していることもわかりました。

■「サケ」の語源諸説

まずはサケの語源の諸説から紹介しましょう。


以下は日本国語大辞典(小学館、2001年)からの引用で、これは日本語源大辞典(小学館、2005年)と同一の内容です。なお原典の出版年を補足してあります。

 

1 肉が裂けやすいところから、サケ(裂)の義〔日本釈名(1700年)、滑稽雑談所引和訓義解、和訓栞(1887年)、言葉の根しらべ(鈴江潔子)〕。
2-a 稚魚のときから全長一尺に達するまで、胸腹が裂けているところからサケ(裂)の義〔名語記(1268年)〕。
2-b また肉の赤色が酒に酔ったようであるところからサカケ(酒気)の反〔同上〕。
3-a 産卵の際、腹がサケルところからか〔かた言(1650年)〕。
3-b また海から川へサカサマにのぼるところからか〔和句解(1662年)〕。
4 肉に筋があってはなれやすいところから肉裂の略か〔牛馬問(1756年)〕。
5 肉の色からアケ(朱)の転〔言元梯(1830年)〕。
6 セケ(瀬蹴)の義〔日本語原学(林甕臣)(1932年)、これは日本語源の研究(1905年)の復刻版〕。
7-a 鮭の大きいものをいう古語スケと関係あるか〔大言海(1933年)〕。
7-b スケと同語。スケは夷語か〔日本古語大辞典(松岡静雄)(1995年)〕。
8 夏の食物の意のアイヌ語サクイベからか〔東方言語史叢考(新村出)(1927年)〕。アイヌ語シャケンベ(夏食)が日本語に入ったもの〔世界言語概説(金田一京助)のアイヌ語(下巻1955年)〕。

1から6は、サケの音が日本語のどの言葉から生じたかを色々と推測しているものです。音韻の変化として妥当なのかどうか私は判断できませんが、どれも語呂合わせのようにしか思えません。

■「裂け」語源説(1、3-a)

ここではその批判の例として大槻文彦編纂『大言海』(富山房、昭和8年)を紹介しましょう。同書は上記の諸説のうち、1の「サケ=裂け」説と3-aの「裂ける」説を紹介した上で、「共ニ、イカガ」と否定的な見解を示しています。「サケ」の音から無理矢理に考え出した説だと解釈したのでしょう。(なお『大言海』には「サケ=裂け」説は、『倭訓栞』(1775年)によるとあります。)

「さけ(名)【鮭・鮏】〔かたこと(慶安、)「此魚、子ヲ生マントテ、腹ノさけハベル、トヤラムト云ヘリ」倭訓栞、さけ「鮏ノ字ヲ読ムハ、云云、裂ノ義、其肉、片片、裂ケヤシ、ト云ヘリ」共ニ、イカガ」

■「スケ=大きなサケ」説(7-a)

『大言海』は7-aの「スケ=大きなサケ」説を提案しています。
先に引用した「さけ」の項目の後段で、次のように「すけ」を参照しろと書いています。
「古語ニ、此魚ノ大ナルヲ、すけト云ヘリ(其ノ條ヲ見ヨ)参考スベシ、鮭<ケイ>ハ、河豚<フグ>ナリ、鮏<セイ>ハ、魚臭ナリ、共ニ、當ラズ〕」。

その「すけ」はどうなっているかというと。

「すけ(名)【鮭】古ヘ、鮭<サケ>ノ、大イナル稱。「常陸国風土記、久慈郡、助川駅、「昔、號遇鹿、云云、至国宰久米大夫之時、為河取鮏、改名助川」註「俗語、謂鮏祖、為須介」(鮏祖ハ、鮭ノ親<オヤ>ノ義ニテ、鮭ノ大イナルモノヲ云ウト云ウ)」(後略)。

『常陸国風土記』(710年)の註は、「鮏祖」を「スケ」だとしています。大槻は、その「鮏祖」は大きな鮭のことだと解釈しているのです。

この「スケ=大きなサケ」説はかなり広まっていて、岩波古語辞典(1974年)でもこれを採用しています。「すけ【鮭】サケのおおきいもの。「俗(くにひと)の語(ことば)に、鮭の祖(おや)を須介(すけ)と謂(い)ふ。」(常陸風土記)」

鮭のおおきなものがスケなら、普通の鮭は何と呼んでいたのでしょうか。また、おおきな鮭のことである「スケ」が、どうして鮭一般に使われるようになったのでしょうか。どうもクエッションマークがつきます。

「スケ」は位を表すカミ、スケ、ジョウ、サカンの「スケ」でもあり、これは次官を意味する言葉です。それでこれを大きいという意味に使うのは確かでしょう。大きい鮭をスケ呼んだののはこの意味かもしれません。とするならその「スケ」が「サケ」になったとするのは無理があります。

■「スケ=サケ」説(7-b)

ところで「鮏祖」については別の解釈があります。河野辰男『口語 常陸国風土記』(筑波書林、1978年)では、「世間の話に云うことには「鮭はもとの名は須介<すけ>とよんでいる」といった。」とあります。

大きな鮭が「スケ」だったのではなく、常陸地方では鮭のことを「スケ」と呼んでいたという解釈です。私はスケは常陸の方言だと理解した方がいいと思います。(ただし実際に常陸にそういう方言があった、あるのかは不明です。)

新潟にある鮭の大助小助(オオスケ・コスケ)の伝説も、大きい鮭と小さい鮭だというと理解があります。これも「スケ」を鮭とする理解です。(スケが大きな鮭=鮭の神様で、大きな神と小さな神という理解もあります。)

方言と言うよりも、古い日本語ではサケのことをスケと言っていた、ということもありえます。ならば「スケ」が「サケ」になった、ということになります。

日本古語大辞典(松岡静雄)は、「サケ」は「スケ」と同語(7-b)としています。そして「スケ」は夷語(えみし語)としています。

夷(えみし)とはアイヌのことです。サケがスケと同語で、スケはアイヌ語だということです。(続く)


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